岳都・松本 山岳フォーラム

イベントレポート

2011年11月20日(日)に松本市にあるホテルブエナビスタで開催された、岳都・松本「山岳フォーラム」は大盛況の内に幕を閉じることができました。ご来場いただきました皆さま、フォーラムの開催ににご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました!
本ページでは、その当日の様子をレポートとして掲載させていただきます。

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岳都長野県松本市にて「岳都・松本 山岳フォーラム」が開催

当日午前、松本駅前の岳都・学都・楽都の碑の前で顔を合わせた田部井淳子さんたち出演者のみなさん 去る11月20日の日曜日に、長野県松本市内のホテルにて「岳都・松本 山岳フォーラム」が開催されました。
このイベントは、北アルプスの玄関口としての歴史がある松本市から、山の魅力や楽しく安全な登山スタイルを発信しようと企画されたものです。女性登山ファッション史の紹介や最新登山ウェアのファッションショー、登山家・田部井淳子さんの講演、さらに「山の日」の制定実現を目指してムードを盛り上げようとパネルディスカッションなどが、大勢の聴衆が注目する中で盛大に催されました。
時折小雨の降る当日の松本市でしたが、会場となったホテルブエナビスタ3Fのグランデには、開演のおよそ1時間も前から大勢の聴衆が駆けつけ、県内はもちろん、首都圏や中京、東海地方や、中には遠く近畿地方から訪れたという人々の姿も見られました。

会場となったJR松本駅前のホテルブエナビスタ ホテルブエナビスタ3階グランデの会場入り口に設けられた各社展示ブース 来場者の年齢層は幅広く、男女を問わず20代からご年輩まで偏りなく見受けられました。登山愛好者はもちろんのこと、学生から初老の夫婦まで、中には子連れのお母さんや業界関係者の姿もあり、このイベントの注目度の高さを物語るようでした。
会場になったJR松本駅前にあるホテルブエナビスタでは、3階のエントランス周辺に、山岳関係の各種展示ブースが設けられ、雰囲気を盛り上げていました。昼過ぎの早い時間から聴衆は集まり始め、入った会場には左右それぞれの正面に、ひとつずつ大きなスクリーンが設けられており、さらに舞台の中央からはファッションショーに使う「花道」が伸びるという、大がかりな舞台が設置されました。いわゆる一般に見る講演会やパネルディスカッションとは大いに趣が異なる会場内の雰囲気で、岳都・松本を謳うにふさわしい内容のフォーラムとなりました。

予想を上回った来場者数

この広々とした会場がほぼ一杯に 「海の日」と同様に「山の日」制定を目指しているのが、松本市をはじめとするフォーラム実行委員会です。記念日制定の実現に向けて、全国に広くメッセージを発信しようと、このフォーラムが計画されました。
当初、実行委員会は700名の入場者を想定していました。ところが、入場希望者からの問い合わせが予想をはるかに上回り、受付を開始するや程なく予定数が埋まってしまいました。そこで急遽計画を変更して座席数の増加を決定。ところが、その後も問い合わせは一向に絶えず、最終的には、1000人分を越える座席を会場に用意することになりました。立冬から10日を過ぎたイベント当日は小雨も舞いよいとはいえない天気でしたが、それにも関わらず大勢の聴講者が詰めかけました。オープニングのビデオ上映開始時にはおよそ600人だった来場者数は、やがて第一部の開始時間になると、会場の座席がほぼ満員になるおよそ1000人にまで膨らみ、場内は熱気に包まれました。

会場入り口では、ゼビオスポーツ、Marmot、MILLETなど登山用品店やメーカーのほか、旅行会社や山岳保険専門の会社が展示ブースを設けて最新のウェアや道具を展示したり、登山に関する質問に対応していました。地元書店の笠原書店は山岳関連書籍を中心に30タイトル以上を展示即売。中には当日の出演者でもある鈴木ともこさんの著書も並び、早速に買い求める人もいました。また、松本市山と自然の博物館が収蔵する、田部井淳子さんのエベレスト遠征時などに実際に使用したウェアなど貴重な山岳資料も展示され、来場者は興味深そうに見入っていました。
開演の13時を前にオープニングイベントとしてハチプロダクション制作によるビデオの『涸沢賛歌』がスクリーンに上映されると、聴衆は美しい映像に見入っていました。続いてこのイベントの実行委員代表として菅谷昭松本市長が壇上に上がり、このイベントを通して山岳文化の啓発活動がより深められ、すべての人が山を考えるきっかけになればとあいさつ。いよいよ本編の幕開きとなりました。

田部井さんがエベレストで使用した登山用具も展示 田部井さんがエベレストで使用した登山用具も展示 古い登山用品も展示してあった 昭和初期から昭和30年代頃の女性登山者の写真パネル オープニングにビデオ『涸沢賛歌』を上映 菅谷松本市長の開会あいさつ

女性登山ファッションの歴史を紐解く

萩原浩さんと華恵さん。スクリーンに映し出されるスライドとともにトークが進行。 イベントの第一部は、女性登山スタイルの変遷をスライドで紹介する「女性ファッションに見る登山史100年」と題したトークイベントでした。
進行役に雑誌『山と溪谷』の編集長を長く務めた経験を持ち、現在は山と溪谷社山岳・自然図書出版部長兼『ROCK&SNOW』編集長である萩原浩司さん。そして進行の相手役を務めたのは、エッセイストであり幼少時からモデルとしても活動する華恵(はなえ)さんで、こちらは山好きでも知られる女性です。
まず萩原さんがスライドを使い、ヨーロッパで入手してきたという古い写真資料などを紹介。1870年にモンブラン氷河を行くスカート姿の女性35人の姿や、続いて『山と溪谷』誌の昭和初期のバックナンバーから女性の登山ファッションの歴史を紹介すると、華恵さんはしきりに「いけてます」「かわいい」と、かつての女性登山者のファッションに現在に通じるおしゃれ感覚を見いだし、独自の感想を述べていました。

各メーカー毎に最新のウェアを着用したモデルが登場 ファッションショーが始まると場内は楽しい雰囲気に包まれた 続いて5つのアウトドアブランドによる「2012年最新登山ファッションショー」。
地元学生の男女18人がモデル役を演じたアウトドアウェアのファッションショーは、アップテンポの音楽とまばゆいばかりの照明で、フォーラム中でひときわ華やかなひとときでした。にわか仕立てのモデルの学生さん達も誰もがみな会場とひとつになって元気に動き回り、ここぞと大音量の音楽と歓声で大いに盛り上がりました。
マムート、フォックスファイヤー、コロンビア、マーモット、そしてミレーとそれぞれに調子の異なる音楽で順に来期の最新ウェアが紹介されました。最後に18人全員がもう一度花道にまで登場し、勢揃いしたところでイベントの第一部が終了しました。

話題と笑いに包まれた基調講演「人生は8合目からがおもしろい~山登りと健康~」

話題豊富だった田部井淳子さんの講演内容 小気味よく張りのある声が会場に響く ファッションショーが終わり、第二部は「山の日」制定シンポジウムです。まずは登山家・田部井淳子さんの基調講演から。松本観光大使である田部井淳子さんの講演は、自身の近年の登山活動の話題から始まりました。
しかし、話題は険しい山々への登山活動のことのみに終わらず、東日本大震災の被災地の方とのふれあいトレッキングや年代の枠を超えて若いグループとの登山の経験談などに及び、さらにはシャンソンや日本の伝統芸能である謡曲の稽古に挑戦して今後もますます密度の高い人生を送っていきたいと発言。全体として未来への希望に満ちた話題でした。
講演が一段落すると、次はエベレスト登頂の記録をスライド上映しながら解説。かつての氷河と近年の縮小してしまった氷河の写真を対比して紹介すると、これには会場から驚きの声が上がりました。

どんな話題においても田部井さんの話しぶりは軽妙で、笑いが絶えないながらも深く共感を呼ぶ内容が盛りだくさん。私たちに多くの元気が出るメッセージを投げかけてくれました。山登りと健康というタイトルの講演でしたが、健康になるための方法が語られたのではなく、この講演を聞くことによりつい誰もが山に親しんでしまいたくなる、結果として健康的に生きられる方法を教わった、そんな講演内容でした。

松本副市長や山小屋友好会長も交えたパネルディスカッション「岳都松本から山を考える」

鈴木啓助さん パネルディスカッションでは山岳関係のみならず各方面から6人が壇上に上がりました。
コーディネーターは信州大学山岳科学総合研究所長の鈴木啓助さん。アドバイザーに田部井淳子さん。パネリストとして、松本市副市長の坪田明男さん、山の日制定協議会代表幹事の成川隆顕さん、北アルプス山小屋友好会長の山口孝さん、漫画家・エッセイストの鈴木ともこさんがそれぞれの経験や立場をふまえた専門家ならではの見解を述べ合いました。

山の日制定協議会の成川隆顕代表幹事は、山の知識や安全を広めるためにも山の日の制定が役立つのではと述べました。
涸沢ヒュッテの社長であり北アルプス山小屋友好会長の山口孝さんは登山道の維持に関しては山小屋の一定の責務は認めるものの現実には限度があることを訴え、行政と一丸となって取り組むことへの意義を訴えました。
自身の山での体験を元にマンガを発表している鈴木ともこさんは、山は性別や年齢、肩書きを超えて人と出会える事が魅力と語り、さらに「こんな登山者は遭難する」といったネガティブな面を強調するのではなく「こうするともっと楽しい」というポジティブな山の入門書が必要と強調しました。

成川隆顕さん 山口孝さん 鈴木ともこさん 坪田明男さん

一方、坪田明男松本副市長は山小屋関係者が登山整備に費やす費用負担の多さを踏まえて、来年度の登山整備費に対する市の補助金増額をする可能性に言及しました。

抽選会で壇上に上がり直接商品を手渡される幸運な来場者最後はおたのしみの抽選会で締めくくられました。パネルディスカッションのパネラー達が引き続き壇上に残り、抽選箱から番号札を引きました。
来場者が持参した入場券の通し番号と合えば豪華景品がもらえるというもので、コロンビア製のトレッキングシューズは、群馬県からはるばる友人と来場した女性に当選。「うれしい!」と靴箱を抱えて笑顔で会場を後にしました。
さらに上高地の宿泊施設ペア招待券、北アルプス山小屋ペア招待券など、山岳関連イベントらしい商品がたくさん用意されました。また、鈴木ともこさんのサイン色紙やICI石井スポーツ松本店が提供した田部井ブランドのフリース、あるいはホテルブエナビスタでの食事券など山道具や優待券が目白押しで、合計60名の入場者に当選。夕闇の迫る17時頃、来場者が帰路についてもまだ会場内には先ほどまでの活気が漂っていました。

主催/岳都・松本「山岳フォーラム」実行委員会

【構成団体】
松本市、「山の日」制定協議会(日本山岳協会、日本勤労者山岳連盟、日本山岳会、日本山岳ガイド協会、日本ヒマラヤン・アドベンチャー・トラスト)、
松本観光コンベンション協会、松本市アルプス観光協会、北アルプス山小屋友交会、日本山岳会信濃支部、上高地観光旅館組合、のりくら観光協会、
信州大学山岳科学総合研究所、アルピコグループ、信濃毎日新聞社

【後  援】
環境省(松本自然環境事務所)、国土交通省(北陸地方整備局松本砂防事務所)、林野庁(中信森林管理署)、長野県、NHK長野放送局、信越放送、
長野放送、テレビ信州、長野朝日放送、エフエム長野、テレビ松本、JR東日本長野支社

【協  賛】(順不同)
カモシカスポーツスーパースポーツゼビオ日本費用補償少額短期保険日本山岳救助機構(jRO)毎日企画サービスラーラ松本、あずさ環境保全、
アサヒビール北陸コカコーラボトリング開運堂丸山菓子舗ホテル玉之湯トヨタカローラ南信タカチホ松本ロータリークラブ、株式会社県設計、
エムティラボ山添シート内装プラルト

コロンビアスポーツジャパン デサント ティムコ ミレー マムートスポーツグループジャパン

【特別協賛】山と渓谷社

お問い合わせは岳都・松本「山岳フォーラム」実行委員会事務局 ◆松本市山岳観光課・・・TEL.0263-25-2153(代)(平日08:30~17:15)
◆信濃毎日新聞松本本社事業部・・・TEL.0263-94-2307(代)(平日10:00~17:00)